【マンガ】心の余裕を取り戻せる良作『働かないふたり』を語る。
暇だなぁと思いながらも、特に何かするわけでもなく。
1日が終わると、漠然とした不安に襲われる。
こんな経験したことある人っている?
ぼくはあるんだよな。
大学2年になって、授業が減ったことで時間にゆとりができたのよ。
けど、バイトは増やさなかった。だるいから。
じゃあ何してたかっていうと、結局は暇を持て余して家で一日中だらだら。
で、夜に「ま~た時間を無駄にしてしまった……」なんて後悔する。
そういう日が続いてたわけよ。
そんなときに出会ったのが『働かないふたり』だったのね。
きっかけはツイッターでたまたま見かけたスクショ。
吉田覚「働かないふたり」第3回より
これだけ見ると、確かに!と笑わせるようなギャグ漫画に見えるじゃん?
まあ、実際ギャグ漫画なんだけど。
主人公はニートの兄と妹。
年齢は明記されていないけど、たぶん兄24、妹20歳くらい。
働かないふたりは、この兄妹の日常が1~3ページ程度のエピソードで淡々と描かれている。
ニートと聞くと、日がな家に引きこもって、毎日を無為に過ごしているイメージがあると思う。
ただこの兄妹、そこらのニートとは一味違うんだな。
まず兄の守がすごい。
大学行かずにフリーターになって、自分でお金を貯めて世界中を旅してた強者。
1ヶ月やそこらの留学でマウント取ろうとする大学生も真っ青だね。
それに漫画賞を受賞するセンスもある。マジで底が知れない。
なんでニートしてんだよ、って言われそうなハイスペックニートだ。
妹の春子も高校まで出ているんだけど、対人恐怖症が祟ってニートになっちゃった。
けど、対人恐怖症なのに散歩中に見かけた困っている人を助けようとする優しい性格の持ち主なんだよ。
ぐだらないけど、最高に楽しそうな日常
収録されているエピソードの大半はマジでくだらない。
2人が部屋で見ているテレビ番組から話題を膨らませたり。
守が遠藤とエロ魔人丸山をイジったり。
春子が年中スウェットなのを見かねたお母さんに服屋へ連行されたり。
などなど……。
なのに、読み進めるとこの2人が羨ましく思えてくる。
これは、2人が毎日を本当に楽しそうに過ごしているからなんだよな。
絵柄も相まって、作中では全体的にまったりとした雰囲気が流れてる。
気付いたら、自分の悩みがバカらしく思えてくる。
恐ろしいマンガだよ、ホントに。
ニート兄妹の周りには、たくさんの人がいる。
この2人は、ニートだけどたくさんの人と関わり合っているんだな。
お父さん、お母さん。守の中学時代の友人である丸山、遠藤。春子の高校時代の友人のユキ、友晴。おとなりのマンションに住むキャリアウーマンの倉木さん。
ほかにも、作中にはたくさんの人が登場する。
2人が関わる人は、巻を重ねるごとにどんどん増えてくのよ。
テコ入れと言ってしまうのは簡単だけどさ。
働かないふたりでは、新しく登場した人をゆるく、でもしっかりと掘り下げてくれるのが良いところなのな。
初登場回だとなんだこいつ……って思ってたのに、次第にその人のことが好きになっちゃうからヤバイ。
ニートでありながら多くの人に囲まれて生きているのは、周りが2人の人間的な魅力に惹かれているからなんだろう。
素直にそう思えるくらい、この2人は生き生きとしている。
たまにある、ハッとさせるエピソード。
さっきも書いたけど、働かないふたりのエピソードは「くだらねー」っつって笑い飛ばす感じのが多い。
でもたまに、ハッとさせるエピソードをぶっこんでくるから困ったもんなんだよな。
目から鱗な話は、最初に引用した春子の発言もある意味そうだけど、基本的に守の発言。
たとえばこんなん。
吉田覚「働かないふたり」第153回より
こんな感じの、自分の中で『常識』と勝手に思い込んでた部分を揺さぶられる発言がチラホラ出てくる。
こういうの読むと、作者すげぇ……ナニモンだよ……って思う。
働かないふたりを読んでからは、それ以前よりも視野が広くなったような気さえした。
あと、普通に感動するエピソードもある。
ある程度キャラのことを印象付けたタイミングで突き付けてくるから、ギャップの大きさがそのままインパクトになる。
タイミングやら按配やらが絶妙で、ホイホイ感動しちゃうってわけだ。
最後に
働かないふたりは噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな仕上がりになってる。
面白ェーーー!!みたいに読み手の感情に大きな起伏が生まれることはあんまりない。
でも、心の余裕を取り戻せるって点ではすごく助けになるマンガだと思ってる。
お金の話になっちゃうからアレだけど、2018年7月の時点で単行本は14巻まで出てて、これから買おうかなって人にはちょっとキツイかもしれない。
でも諦めるな。朗報だ。
全部ってわけじゃないけど、かなりのエピソードがウェブ上で公開されてる。
これ読んで、公開終了しちゃったエピソードも読みてぇ!って思えたら、単行本を検討すりゃいい。
実際に購入まで至ったら、握手。
お互いの好きなエピソード語り合おう。