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疲れた社会人に送る「独身サラリーマン鈴木の生態」

全ての疲れた社会人の心を揺さぶる名作、「独身サラリーマン鈴木の生態」について。

先に断っておくが、この作品は主人公が特別な才能で成り上がるとか、大きな目標を成し遂げるとか、そういったドラマチックなものではない。

むしろ、ごくごくありふれた悩みを抱える社会人の物語である。


完結済みで、単行本は全2巻と読みやすい。


疲れた社会人は全員読んでほしい。

独身サラリーマン鈴木の生態

主人公の鈴木は旅行系の会社に社内SEとして勤める独身の男。


人事からの評価は

「締め切りは守らない」
「仕事は遅い」
「やる気はない、だらしない」
「どの会社にも必ず1人はいる、社歴だけは長い怠け者」

という悲惨なもの。


部下からも舐められ、パシらされる日々。


無気力に、死んだ魚のような目で過ごしている。



一巻での鈴木は、ひたすらに「カッコ悪い大人」として描かれている。

時には周りから哀れまれることすらあり、ギャグテイストながら心が苦しくなることもしばしば。

牛丼は社会人の味

「牛丼なんて小遣いが少ないサラリーマンが食う 負け犬の食べ物だと思ってたけど 今となってはご馳走だよ」

これは第一話冒頭の鈴木のセリフである。


学生の頃に牛丼屋で見かけたサラリーマンはなんとなく背中が小さく見えた。


でも社会人になって、ぼくたちは仕事終わりに食べる牛丼のおいしさをようやく学んだ。


ちょっと仕事がうまく行った日なんかは、自分へのご褒美にトッピングを多めに頼んだりしてやるのだ。


さて、このセリフに対する部下の感想がこれだ。



「多分それは…自分がその負け犬ってやつになったからでは…」







なんでそんなこと言うの…?





そう、このマンガの主人公である鈴木は、自分がかつてこうはなりたくないと思っていたカッコ悪い大人になった者の末路なのだ。

そして鈴木自身が、部下の笹森からは「こんなオッサンにはなりたくないな…」と思われている。悲しい。


しかし鈴木も、なりたくてロクデナシになった訳ではなく、それを良しとしている訳でもない。


以下は一話の最後の鈴木のセリフである。


「俺さあ」
「まさか社会人になった自分がこんなろくでもない生活してるなんて想像もしなかったわ」
「もしかして一生これかと思うと ちょっと怖い」

眩しい新人、七海

そんな鈴木と対照的な存在が、新人の七海。


若く、可能性に満ち、向上心を持っている。


入社したばかりで仕事はできないけれど、元気に挨拶をしたり、率先して掃除をしたりとやる気は十分。


見た目のコンプレックスもあって、鈴木は七海に苦手意識を感じ、ひねくれた態度をとってしまう。


しかし最大の理由は、昔の自分を見ているような気持ちになるから


かつては鈴木も、意欲をもって働いていたのだ。

また新しい朝がくる

二巻では鈴木がカッコ悪い大人になってしまったきっかけと、それに向き合う姿が描かれる。


鬱屈とした鈴木の心境がなんともリアルで胸を抉られるが、最後には前を向く勇気を与えてくれた。


冒頭で書いたとおり、この作品はドラマチックなものではなく、多くの社会人にとってごくごくありふれた悩みを描いた物語である。


どこか他人事のようには感じられず、自分を見つめなおすきっかけになった本だった。


みなさんにも、ぜひご自身の目で結末を見届けてほしい。


それでは、鈴木マ球先生の次回作でまた会いしましょう。